音だけで考えてみても、やっぱり色相がないと、メンタリティのある音が出せないと思うんです。詩を書く場合でも、漠然とでは書けないので、時間は夕刻がいいなあとか、気温は頬が切れるような寒さがいいとか、息がどの位白く見えるとか、そういうシチュエーションを徹底する。そこに人間を立たせたり、動物でも建物でも、光でもいいんですけどそういうものを重ねてみる。そこまで映像を思い浮かべないと書けないんです。あんまり具体的な話になるのは嫌なものですから、一人称や二人称を出さずに、感情の起伏のようなものを出したい。するとそういった映像的なシチュエーションは欠かせない。写真のような平面だったり、立体であったりするんですけど。そんな意味で音楽とアートというのは関連性があるんじゃないかと思いますね。

引用-吉田美奈子が語るアートと音楽(文=北小路隆志 STUDIO VOICE Vol.251 1996年発行)