DAWN

海の話

海の話

僕は海に育てられた。
子供の頃はとにかく海にダイブし続けた。
大きくなるとサーフボードを持って海へ出た。
初めて死を感じたのは海だった。
巨大な波に飲み込まれたときだった。
ボードは吹っ飛んで僕は溺れてしまった。
しばらくはどうにかなると思って泳いだが、途中からはパニックを抑えることに気を取られた。
体力がなくなるからパニクる。パニクったら死ぬ。
死への道がくっきりと見えてもう笑うしかなかった。
そのとき自分の中から声が聞こえた。
おまえ死んだらだめ、みたいな。
僕は初めて生きることに必死になった。
海が教えてくれたのは死への恐怖ではなかった。
僕は巨大な優しさに触れたような気がしてならない。
もしかすると死は巨大な優しさなのかもしれない。
巨大な優しさを受け入れるだけの巨大な優しさを持ち合わせていれば、きっと死は怖くない。
まだ受け入れられないから、生きて優しくなろうとしている。
僕はそんな気がしている。
だから海は最高だ。